認知症高齢者の徘徊や行方不明者については大きな社会問題になっており、高齢化が進むなか、毎年その数も増加の一途をたどっています。
徘徊が始まると介護も大変になるイメージがあると思いますが、実際に徘徊は簡単に止められず、行方不明になったり大きな事故につながることもあるため、悩んでいる人も多いでしょう。
本記事は実際に家族が徘徊して困っている人やこれから認知症介護で不安を抱えている方に見てもらうことで、徘徊の原因や行方不明者への対応について知ることができる内容になっています。
ぜひ最後までご覧いただき、少しでも安心した在宅生活が続けられる一助になればと思います。
高齢者の徘徊の原因とリスクについて
はじめに徘徊の原因とリスクについてふれ、なぜ徘徊をするのか、実際に徘徊することでどんなことが起こってしまうのかを解説いたします。
徘徊の原因は認知症の症状と環境要因
徘徊は認知症の症状の一つということは広く知られています。認知症の代表的な症状に記憶障害と見当識障害があげられます。この代表的な認知症状に加えて環境面によっても徘徊を助長してしまうことも知っておくべきでしょう。
記憶障害と見当識障害
記憶障害とは読んで字のごとく記憶に何らかの障害がはたらき、まともな判断等ができにくくなる症状です。特に短期記憶障害といって、さっきまでのことを忘れてしまい自分が何をしようとしていたのか分からなくなり、パニックになってしまいます。
見当識障害は場所や時間、人が分からなくなる症状です。急に今住んでいる家が自分の家ではないような気がしたり、家族を他人として認識してしまうようなこともあり、徘徊や行方不明の要因になってしまいます。
短期記憶障害と見当識障害が組み合わさることで、より徘徊のリスクは高まります。例えば買い物に行く途中で自分が何をしているか分からなくなり、場所の認識もできずフラフラと違う場所に行くことで、行方不明になりかねないことが起こります。
徘徊を誘発しやすい環境や生活歴
徘徊の要因は認知症状だけではありません。本人をとりまく環境面も配慮すべき点でしょう。特に自宅環境が本人にとって良い生活の場になっているのかは重要なポイントです。
トイレの場所が分かりにくい、見慣れないものがある、周りから注意されることが多い等、本人のストレスが大きくなるとその場に居づらくなり、外への気持ちが強くなります。
またその人の生活歴で、仕事や実家への思いが強いと(もう何年も前に仕事を辞めているのに)仕事に行かなけらばならないと感じたり、実家に帰ろうとすることが結果的に徘徊や行方不明につながることもあります。
徘徊することでおこるリスク
認知症高齢者は年々増加し、徘徊による行方不明者も増えています。その背景には独居老人が増え、いなくなったことに気づくのが遅れたり、徘徊している人は一見すると普通に散歩をしているようにも見えるため発見が遅くなってしまいます。
徘徊は体力のない高齢者にとって、熱中症や低体温症などの命を脅かすことにつながり、実際に亡くなる方も決して少なくありません。危険認知力も低下しているため、不意に道路に出て交通事故に合う可能性もあるでしょう。
また山に迷い込んだり川に誤って転落するような事故も多く、思いもよらないことが起こってしまうことも徘徊や行方不明の大きな特徴です。
高齢者の徘徊を減らすための予防策
これまで徘徊の原因とリスクについてふれてきました。次にどうしたら命の危険もある徘徊や行方不明を予防していくかについて、いくつか方法をあげていきます。
居心地を良くする環境づくり
まずは本人に「自分はここに居て良い、ここで過ごしたい」という気持ちになるような生活環境や関わりづくりが大切になります。
住環境でいうと使い慣れたものを置くとか、好きな音楽を流すなどの工夫が必要です。認知症高齢者は新しいことやいつもと違うことが苦手なので、昔から馴染みがある環境だと気持ちが落ち着きやすいです。
また認知症が進行するとどうしてもトイレの失敗が増えたり、動作が遅くなってしまいますが、そういった行動に対して家族が怒ったりすると不安ばかりが募り、ここに居てはいけないと思ってしまうこともあります。
家族だとどうしても口調が強くなりがちですが、怒る口調がより認知症の症状を悪化させることを理解し、気持ちを上手にコントロールしながら介護をしていく必要があります。
趣味や役割をつくる
日々何かすることがあれば、そちらに意識が向くので外に出ようとすることが減ります。本人が続けている趣味や家事など、家で主体的に取り組むことがあれば、できるだけしてもらう方が良いでしょう。
自分から行う活動は認知症の進行予防においても大きな効果があり、本人にとっても家族にとってもプラスにはたらくことが考えられます。
人はいつまでも自分のペースを大切にしたり、人のために何かしたいと思えるものです。認知症だからということで、できないイメージで趣味や役割を中止することは結果的に悪い方向に向かっていく要因になりかねません。
介護サービスの利用
認知症の症状がでているのであれば、ある程度介護が必要な状況だと思われます。家族だけで何とかしようとするのではなく、専門家の力をかりることをお勧めします。
まずは地域の介護の窓口でもある「地域包括支援センター」に連絡してみましょう。認知症支援に関するネットワーク事業や介護サービスにしっかりつなげてくれるはずです。
高齢者が徘徊した時の対応
ここでは実際に徘徊が起こった時の対応について具体的に説明します。徘徊は時間との勝負といっても過言ではなく、発見が翌日までであれば元気な状態なことが多く、3日目以降になると生存率が大きく下がります。最悪の結果にならないよう、以下のような早い対応が望まれます。
警察や地域の見守りネットワークに連絡
徘徊で行方が分からなくなったときは、まずは警察に連絡したほうが良いでしょう。警察にいきなり連絡するのは抵抗がある人もいるかもしれませんが、緊急時でもあり、実際に警察も認知症対応のケースは多いため、迅速に動いてくれます。
できれば徘徊リスクのある人は事前に警察に相談をして、本人の特徴や写真、日ごろから行きそうな場所などを情報提供しておくと、いざという時にすぐに捜索にうつれます。
合わせて地域の認知症見守りネットワークに登録しておくと、認知症支援の協力者に情報が届き、地域の目が増えることで行方不明を予防できます。地域包括支援センターや市役所等に相談すると、ネットワーク事業や地域資源の活用を紹介されます。
センサーやGPSを活用し行方不明を防止
最近は徘徊や行方不明を予防する良いグッズがたくさん出ています。代表的なところは玄関を出たらすぐに家族に通知がいくセンサーや、本人の居場所が分かるGPSの活用です。居場所が分かるので行方不明を防止し、事故に合う前に保護できる可能性がグンと上がります。
GPSは靴に取り付けるものや杖に付けるものなど、本人の動きに合わせて選ぶかたちになります。できるだけ日々の生活や動作に合わせることで違和感なく使用できることがコツといえるでしょう。
介護施設の活用
これまで紹介した徘徊予防や実際に徘徊した対策をしても、なかなか在宅生活が困難であれば、入居施設に入ることも一つの選択肢といえるでしょう。
たとえばグループホームは認知症対応型で少人数のグループ生活の中でお互いが協力しながら生活していくかたちの入居施設です。雰囲気も家庭的なところが多く個室でプライベートも確保されているため、本人にとって比較的なじみやすい空間といえます。
グループホームのほかにも地域によって入所できる施設は色々ありますので、本人にあったところを探すことも事故を防ぐ一つの方法といえます。
最後に
今回は認知症高齢者の徘徊について原因とリスク、予防策のポイントに絞りながら解説しました。徘徊や行方不明は本人の命に関わることも多く、家族としても心配がつきないでしょう。
自分たちだけで何とかしようとすると無理が生じ、大きなストレスからさらに状況が悪化することも考えられます。
地域には認知症や徘徊についてサポート体制を整える仕組みがあるため、困ったらできるだけ早めに地域にある包括支援センター等の相談窓口に行くことをお勧めいたします。
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