人生100年時代となり、平均寿命が上がるにつれ一人暮らしの高齢者率も毎年増加しています。超高齢化社会の中で生活するには、それだけお金がかかり経済的に不安を抱えている人は多いでしょう。
高齢になると病気になったり介護が必要になったりと予定外の出費もあります。収入が年金だけの人も多いので、限られた収入で何とかやりくりする人が増えているのも事実です。
今回は実際に一人暮らしの高齢者がひと月の生活費にどれくらいかかるのかを具体的に示し、今後の生活設計の目安にしていただければと思います。
また在宅介護をサポートしている専門職の立場で実際に高齢になることで起こる経済的リスクと対処法についてもまとめていますので、是非参考にしてください。
一人暮らしの高齢者の支出について
まずはじめに高齢者の一人暮らしで必要な生活費について全国平均値を出しています。食費や光熱費などの生活にかかる費用から、入院費や自宅リフォーム代など突発的な支出まであげております。
単身高齢者の生活費の内訳
総務省統計局の2022年「家計調査年報(家計収支編)」 を参考に、「65歳以上の単身の無職世帯」の毎月かかる生活費の平均額を以下に簡単にまとめています。
食費 | 3万7,485円 |
住居費 | 1万2,746円 |
光熱水費 | 1万4,704円 |
日用品・衣類費 | 9,106円 |
保険・医療費 | 8,128円 |
交通・通信費 | 1万4,625円 |
娯楽費 | 1万4,473円 |
その他 | 3万1,872円 |
直接税 | 6,660円 |
社旗保険料 | 5,625円 |
合計:15万5,424円
以上の内訳から高齢者が単身世帯で生活するために月の平均の支出が15万円程度かかることが分かります。持ち家があったり住んでいる地域によって差はありますのであくまでも目安にしてください。
生活費以外の出費について
上記であげた生活費以外にも急な出費はつきものです。金銭的に大きな額が動く出費としていくつかあげてみました。
- 住居のリフォーム代:もし持ち家で築数十年と経過していれば、住居のリフォームもしなければなりません。規模にもよりますが、多くなると数百万円単位の出費になるでしょう。トイレや浴室などの部分的な改装も材料費の高騰でかなり値段が上がっている現状があります。
- 車の購入:車も生活に欠かせないものになりますので、収入の少ない老後であればより大きな買い物に感じるでしょう。仮に車をやめたとしたらガソリン代や維持費も無くなり良いと思われますが移動にタクシー等を使うとなるとそれも重ねると大きな出費です。
- 入院費や介護費:高齢になるとどうしても病気になりがちで手術等で入院する可能性も高くなります。また今まで通りの動きができにくくなり介護サービスの利用につながることもあります。介護サービスは介護保険が適用されることも多いですが、入所サービスになると入所一時金等のまとまったお金が必要になることあります。
高齢者の月の平均収入について
はじめのところで高齢者の一人暮らしにかかる費用について平均した額をまとめてみました。続いては収入(年金)について簡単にふれ、支出との差を把握していただければと思います。
厚生労働省年金局の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」 による老齢基礎年金(国民年金)と老齢厚生年金の平均受給額は以下の通りです。
年金の種別 | 男性 | 女性 |
老齢基礎年金(国民年金) | 5万9,013円/月 | 5万4,346円/月 |
老齢厚生年金 | 16万3,380円/月 | 10万4,686円/月 |
この金額から分かるように年金だけではなかなか余裕のある生活ができにくいことが分かります。老後で困らないようにある程度の貯蓄は必要ですが、高齢者でも個々で収入を得る仕組みをつくったり、NISAやiDeCoのような積み立て投資を活用する必要性が、今後さらに高まるでしょう。
高齢者に起こりやすい経済的リスクとは?
高齢になると徐々に体の動きが悪くなったり、病気による治療費がかかったりとこれまでと違う出費が発生することがあります。思わぬ出費で生活に大きな打撃になることもあるでしょう。経済的リスクを知っておくことは予防につながるので簡単に紹介します。
病気による入院費や治療費(薬代)介護費用
一番可能性の高いリスクとしては健康を害したことによる医療費の増加でしょう。はじめにもお伝えしましたが高齢になるとどうしても病気になったり骨折するなどして、入院や通院することがあります。
一度治療が始まるとしばらく通院したり、服薬を継続するために定期的に医療費がかかってしまいます。健康を維持するために必要ですが、医療費の増加は生活そのものを圧迫しかねないものです。
また病気等をきっかけに介護が必要になると介護保険サービス等の支援にお金が必要になります。サービスの種類や頻度により金額は変わりますが、月に数千円から数万円の出費はかなり大きな負担でしょう。オムツ等も使用すると毎月の費用はさらに高くなります。
車を手放したことによる移動費
高齢者による事故をよくニュースで見ることも多く、後期高齢者には認知機能検査も導入されるなど高齢になると運転を控える人は増えています。家族としても事故を起こしてはいけないと早めの免許返納を本人に求めることで仕方なく運転を諦める人も多いでしょう。
ただ運転をしないことでちょっとした外出が出来なくなり、普段の買い物でタクシーを使ったり、通院の際に公共交通機関を使うなど移動にお金がかかることが発生します。
また外出頻度が減ると認知症状が進むなどの健康被害につながり、結果的に医療費や介護費用が発生することもあります。
特殊詐欺や訪問詐欺被害
高齢者が詐欺にあうニュースをよく耳にします。これだけ注意喚起しているのに一向に被害がなくならないのは一人暮らしの増加も背景としてあるでしょう。
2022年の警視庁の発表で「オレオレ詐欺」等の特殊詐欺の実に85%以上が高齢者というデータもあり、全体の被害額は361.4億円と多額の被害が出ています。
高齢者の一人暮らしをねらったリフォーム詐欺のような訪問販売も増えている現状があり、コツコツ大切に溜めてきた財産をたった一度の詐欺で失うのは絶対に避けたいリスクです。
経済的リスクを予防するための方法
上にあげた高齢者で発生しやすい経済的リスクに対して、何か対策はあるのでしょうか。ここでは少しでも出費を軽くできるように予防策やサービスを紹介します。
生活習慣(運動・食事・睡眠)の改善
とにかく健康に気を付けるために可能な限り生活習慣を改善することでしょう。シンプルに「栄養バランスに気を付けた食事」と「適度な運動」「良質な睡眠」の3つを大切にすることです。
生活習慣の改善は医療費や介護費用を抑えるだけでなく、生き生きとした人生をおくることにもつながるので、一番コスパの良い方法と言えるでしょう。
分かっていてもつい好きなものを食べ過ぎたり、運動する機会も設けられなかったりするのはよくあることです。簡単に自宅で出来る運動メニューについてリンクを貼っておきますので参考にしてみてください。⇒運動しにくい高齢者でもすぐに自宅で出来る筋トレメニューを紹介
宅配サービスや配食サービスを活用
今はネット通販が当たり前になり、買い物に行かなくても自宅に品物が届くようになりました。買い物に行って自分で見て選ぶことも大切ですが、移動にタクシー代等、毎回費用がかかるようであれば宅配してもらうことで経済的に負担が軽くなる人も多いでしょう。
特に食事は毎日のことなので、宅配弁当の活用は健康面でも大変ありがたいサービスです。最近は色々な宅配弁当が全国各地で展開されており、自分にあったものを選ぶことができます。宅配弁当についてもまとめたリンクがあるので見てみてください。⇒高齢者のおすすめ宅配弁当は?
詐欺予防の環境づくり
高齢者の詐欺を予防するためにいくつか方法はあります。日ごろから孤独にならないように人との繋がりをもったり、特殊詐欺予防のための電話を使用するなどが代表的な方法でしょう。
高齢者詐欺が一向に減らないのはまさか自分はかからないだろうという危機意識の低さがあります。日ごろから詐欺の特徴を知ることも大切ですので、高齢者が被害にあいやすい詐欺と対策についてまとめた記事を貼っておきます。⇒高齢者を詐欺から守る対策についてわかりやすく解説
さいごに
今回は高齢者の一人暮らしの生活費についてふれ、実際にどれくらいかかるのか、収入との差はどれくらいかを知っていただきました。年金だけだとどうしても余裕がある生活は難しく、不安は大きいことも分かりました。
あわせて高齢になることで起こりやすい経済的な負担について知っていただき、事前の対策方法についても紹介しました。
この記事を読んでいただくことで、高齢者の方がよりよい人生を長く送っていくことにつながればと思います。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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