高齢になるとトイレが近くなったり、場合によっては尿漏れも度々見られることがあります。尿漏れが気になるあまり、人との交流や外出を避けるようになると、徐々に身体機能も衰え、要介護になる可能性もグッと高くなってしまいます。
頻尿や尿漏れはただの老化と感じる人も多いかもしれませんが、実は色々な原因が混じっており、その原因に応じて対策方法も違います。
今回は高齢者や家族の悩みでもあるトイレが間に合わない問題について、原因と対策について詳しく解説いたします。是非最後までお読みいただき、日々の生活のサポートに役立てて下さい。
高齢になると増えてくる排尿トラブルの症状
はじめに排尿トラブルの主だった3つの症状について解説いたします。症状に合わせた原因や対応策も後で説明いたしますので順番にご覧ください。
尿が漏れてしまう
尿失禁には以下の4つのタイプがあります。簡単に特徴をまとめてみました。
- 切迫性尿失禁:急に尿意があり、我慢できずに漏れてしまう症状です。外出先ではトイレが近くにないので大変困ることが多いでしょう。男性では前立腺肥大症、女性は子宮脱などの病気が原因で起こることもあります。
- 腹圧性尿失禁:重い荷物を持ったり、くしゃみをしてお腹に力が入った時にその勢いで失禁してしまう症状です。骨盤底筋の低下によって起こり、出産を経験した女性に多い特徴があります。
- 溢流性尿失禁:自分の意志に反して尿が少しずつ出てしまう症状です。男性に多く前立腺肥大や直腸がんの手術後などに起こりやすくなります。
- 機能性尿失禁:排尿の機能は正常ですが、身体または認知面が要因でトイレが間に合わない状態です。例えば歩行が不安定でトイレに行くのに時間がかかったり、認知症の症状で場所が分からないころで失禁につながってしまいます。
尿の回数が多い(頻尿)
一般的に日中帯の時間に8回以上、夜間は2回以上トイレに行かれる人は頻尿とされています。頻尿のタイプは病気からくるものや習慣性、水分摂取量など、様々な要因があります。
日中の頻尿については少し意識し水分量や飲み物の種類を変更するなどで改善することもありますが、なかなか症状が改善しない時は前立腺肥大等の病気も疑ったほうがよいかもしれません。
また夜間頻尿は高齢者ほど多くなり、睡眠時間を削るため生活の質を下げたり、夜間のトイレまでの移動で転倒につながったりと、大きな不利益を被ってしまいます。
尿がなかなか出にくい
尿がなかなか出にくい症状は排出障がいと言われています。これは膀胱排尿筋の収縮力低下や、膀胱の出口の抵抗が大きくなることにより、排尿が困難になってしまうものです。
排出障がいには主に2つのタイプがあり、一つは排尿後に膀胱に尿が残っていると感じる「残尿感」ともう一つは排尿後に意図せず尿が出てくる「排尿後尿滴下」です。
高齢者では、排出障がいと上記にある失禁や頻尿が同時に生じる場合も多く、生活の中での大きな悩みやストレスになってしまいます。
高齢者の排尿トラブルの原因
排尿トラブルの症状についていくつか説明してきましたが、ここではそれらの症状の原因についてあげています。
骨盤底筋の低下と膀胱の容量の変化
排尿トラブルの大きな原因の一つに骨盤底筋のゆるみがあげられます。骨盤底筋は膀胱や尿道などを下から支える筋肉で、排尿をコントロールする役割も果たしています。特に女性に多い腹圧性失禁はこの骨盤底筋が低下することで起こることが多いです。
また加齢による膀胱の変化も排尿トラブルの要因です。膀胱の容量が小さくなり尿を貯めておけなくなったり、膀胱の収縮力が低下して十分に排尿できず、頻繁な尿意を感じます。結果として失禁したり頻尿になってしまいます。
ともに高齢になるほど、症状が出やすいですが、生活習慣の改善や簡単なトレーニングである程度予防することが可能です。
疾患によるもの
失禁や頻尿の症状をもたらす代表的な疾患としては過活動膀胱があげられます。これは膀胱にまだ尿が溜まっていないのに勝手に強い尿意を催すことで起こります。切迫性失禁の原因にもなる前立腺肥大症や骨盤底筋の筋力の低下、脳卒中の後遺症などで起こることもあります。
男性に多い前立腺肥大症は加齢とともに前立腺が尿道を圧迫して、尿を出しにくくしたり、急に尿意を催すなど悩ましい症状が特徴です。70歳以上の男性のおよ70%が前立腺の肥大があるとされており治療を受けている人も多いでしょう。
また腎臓の病気は腎機能の低下で尿を濃縮できなくなり、夜間頻尿や初期のころは多尿の症状が顕著にでます。さらに血中の糖の濃度が高くなる糖尿病はひどくなると神経障害から尿が出にくくなることもあり、症状が悪化する前に治療することが大切です。
認知症が原因
排泄トラブルの原因で分かりにくいものが認知症が原因になるときです。明らかな物忘れ等があれば気付きやすいですが、軽度認知症の高齢者であれば、見落としがちになります。
具体的な症状としては認知症でトイレの場所が分かりにくくなったり、排泄の感覚が鈍くなり失敗が少しずつ増えることもあります。本人もショックですので家族にはなかなか言えないことも、気付くのが遅くなる要因かもしれません。
失禁等が続くようであれば、紙パンツやパッド等の対応も考えられますが、本人の自尊心を傷つけないようなはたらきかけが必要になります。
心因的な要因や環境の影響
緊張やストレスもトイレが近くなる要因になります。人前に出るようないつもと違う緊張した場面でやたらとトイレに行きたくなるように、実際に自分自身で体感した人もいるのではないでしょうか。
強いストレスが頻尿を引き起こすことは医学的にもいわれており、膀胱等に特に問題なく、尿量も正常なのに、トイレのことが気になって何度も通うのは心因性の頻尿です。
また寒さでトイレが近くなることを体験した人も多いでしょう。これは汗で出る体内の水分が寒いと少ないということと、膀胱が寒さで収縮し、尿意を感じる2つの理由があるとされています。
高齢者の排尿トラブルの対策
これまでにあげた排尿トラブルの症状と原因について具体的な対策が気になると思いますので、後半は排尿トラブル対策についてまとめています。
骨盤低筋を鍛える
骨盤低筋を鍛える運動は身近にできる予防策です。これは肛門や膣を締めること同時に尿道筋も鍛えることができ、尿漏れや頻尿に大変効果的です。方法について以下に簡単に記しますので参考にしてください。
- 椅子に座っている状態か仰向けで膝を立てた状態でリラックスする。
- 男性は肛門と陰嚢の付け根、女性は肛門と尿道を意識してお腹の方向へ引き上げるつもりで10秒間締める。
- 5秒休憩してまた10秒締めるというように、これを1セットとして10回繰り返す。1日のうちに何度かこのエクササイズを設けるとさらに効果的。
また骨盤低筋運動とは別に単純に尿意を我慢することで膀胱を鍛えることができます。まずはトイレに行きたくなって5分我慢することから始めて、徐々に分数を伸ばしていくとよいでしょう。ただし我慢をし過ぎることや腎臓や膀胱に病気がある人は注意が必要です。
泌尿器科等の専門医を受診
排泄のトラブルは色々な原因があり、そこには病気が隠れていることも少なくありません。頻尿や多尿などで生活に支障が出ているような人は一度専門医を受診してみてはいかがでしょうか。
まずはかかりつけ医に相談し専門医を紹介してもらっても良いでしょうし、泌尿器科や女性であれば婦人科に行くのも良いでしょう。
症状に合わせて適切な助言をくださったり、必要であれば症状に合わせた薬の処方であなたの排泄の悩みをケアしてくれます。
生活習慣を整える
生活習慣を見直すだけで、随分排泄のトラブルは改善する可能性が高いです。具体的には水分摂取量をコントロールしたり、コーヒーや緑茶などの利尿作用がある飲み物は控え、麦茶や白湯にするなど、できることに取り組んでみましょう。
またウォーキング等の有酸素運動をすることで骨盤底筋近くの筋肉も鍛えられ全身の血流がよくなり、症状の改善につなげることもできます。体を動かすことは糖尿病予防にもつながり、健康面と排泄面の両方を良い方向に進める最良の方法といえるでしょう。
改善方法のはじめに紹介した骨盤底筋を鍛えるトレーニングと一緒に行うとさらに効果が高まりますので、是非運動習慣を生活の中に組み込んでみてください。
ストレスや排尿の不安を減らす
強いストレスが続けてかかると排尿トラブルにつながります。運動で軽く汗を流したり、好きな音楽を聴いたり、カラオケで大きな声をだすなど、自分なりのストレス解消法をみつけることが大切です。
また精神的に不安感を解消することも大切で、外出時にはトイレの位置を確認したり、万が一のためにと尿モレパットをつけたりしておくだけでも、気持ちが違います。
環境を整えたりサポートグッズを活用することで安心感がうまれ、頻尿の改善につながります。不安を感じた時には、ゆっくり深呼吸をするだけでも違いますので自分にあった解消法を試してみてください。
まとめ
今回は排泄トラブルについて症状と原因、そしてそれぞれに合わせた対策方法について説明させていただきました。
高齢になると徐々に増えてくる排泄トラブルですが、デリケートな問題なのでなかなか周囲に相談できず、悩んでいる人は多いでしょう。家族が理解し、声をかけるだけでご本人は気持ちが楽になるかもしれません。
せっかくの人生、できるだけ長く不安なく、楽しみたいですよね。今回の記事の内容を参考にしていただき、気持ちの良い時間を増やしていってほしいです。最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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